すべてに人に健康と福祉を:SDGs(エスディージーズ)行動目標3
はじめに
すべての人と地球のためにより良い世界をつくることをめざし、国連のすべての加盟国は、2030年までに持続可能な開発目標(SDGs)の行動目標を達成するために最善を尽くすことに合意しました。世界各地で進展がみられますが、2030年までにSDGsを達成するには、取り組みのスピードを速め、規模を拡大しなければなりません。DGsとは何か、SDGsの行動目標3『すべてに人に健康と福祉を』についてまとめます。
SDGsとは
貧困、気候変動、感染症、紛争など、私たち人類は、今、これまでになかったような様々な課題に直面しています。このままでは、人類がこの地球上で安定した幸せな暮らし続けることが困難になるの危機感が生まれています。このような山積している地球的課題を解決するために、世界中の多様な立場の人々が意見を交わし合いました。そして、2015年の国連で開かれたサミットで、『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』と題する2030年に向けた具体的な行動指針が採択されました。この指針の中核をなす「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」を「SDGs(エスディージーズ)」と呼んでいます。SDGsは、誰ひとり取り残さないことを目指し、先進国と発展途上国が一丸となって達成すべき17の行動目標で構成されています(図1)。
すべてに人に健康と福祉を
SDGsに先行した世界的な取組みとして、ミレニアム開発目標(MDGs)がありました。MDGsにより、予防可能な病気による子どもの死亡は50%以上減少、妊産婦死亡も全世界で45%減少、HIV/エイズの新規感染者数も2000年から2013年にかけて30%減少、620万人以上がマラリアから救われました。しかし、世界の健康と福祉には、様々な課題が山積しています。例えば、5歳を迎えられずに亡くなる子どもは600万人を超えています。はしかや結核などの予防可能な病気で、一日あたり1万6000人の子どもが命を奪われています。妊娠と出産によって生じる合併症で死亡する女性は一日あたり数百人にのぼります。サハラ以南のアフリカ諸国では、依然としてエイズが思春期の若者世代で最大の死因です。これらは、予防と治療、教育、予防接種、性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)のケアと支援を受けることによって回避することが可能です。
SDGsの行動目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」は、エイズ、結核、マラリアやその他の感染症の蔓延を2030年までに制圧するという、大きな行動目標を立てています。また、現在猛威を振るっている新型コロナウイルス(COVID-19)に対する人類の戦いについても、SDGsの一環ととらえることできます。これを達成するためには、医療を完全に普及させ、すべての人が安全で効果的な医薬品とワクチンを利用できるようにすることです。
SDGsの行動目標3は感染症対策以外の目標も設定されています。表1にその達成基準項目を示します。それには、「2030年までに、生活習慣病などの非感染性疾患 (NCDs) による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させる」の項目があります。沖縄県は働き盛りの健診データが9年連続ワースト1位、働き盛りを中心とした肥満・生活習慣病の増加、働き盛りの早世が、大きな健康課題となっています。この状況を打破するために、県内各地で健康向上の取組みが展開されています。それらは、まさにSDGsそのものです。みなさんが普段からと取組んでおられる地域健康づくりも、立派なSDGsです。
3: あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する | |
---|---|
3.1 | 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。 |
3.2 | すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1、000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1、000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。 |
3.3 | 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。 |
3.4 | 2030年までに、生活習慣病などの非感染性疾患 (NCDs) による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。 |
3.5 | 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。 |
3.6 | 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。 |
3.7 | 2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。 |
3.8 | すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ (UHC) を達成する。 |
3.9 | 2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。 |
3.a | すべての国々で、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。 |
3.b | 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患(NCDs)のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。 |
3.c | 開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。 |
3.d | すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。 |
まとめ
みなさんの普段の地域健康づくりの取組みは、SDGsそのものです。コロナ禍の状況での地域健康づくりには、様々な課題と苦労があると思いますが、みなさんの日々の取組みは、確実に未来の健康と福祉につながっています。
コメント